・診療・出産・育児・介護
父が癌を患った期間は短く、私はまだまだ臨床経験も少なかったので、父の下で修行する日々が始まった。その頃、同級生の主人と結婚したが、主人は卒業してからずっと横浜の開業医の先生のところで勤務させて頂いていた。しかし、結婚後なかなか子宝に恵まれず、私も30代半ばだったので、不妊治療をせざる得ない状況になってしまった。仕事をしながらの不妊治療は辛かったが、長男を授かることができて本当に良かったと思っている。
出産を機に、主人は丹野歯科医院へ入ってくれることになったが、その準備など、いろいろあって臨月まで出勤することになってしまった。出産後は、11ヶ月から長男を保育園に預けて仕事に復帰した。父と主人と私の3人での診療がスタートしたが、男の子はよく熱をだすもので、2週間元気でいてくれたら良いほうで、救急車のお世話になったり、入院したり。今ではそれも良い思い出である。
ちょうどその頃、ついに母の介護という問題が降り掛かってきた。孫を追いかけていて、坂道で転倒しての骨折だったが、精密検査の結果、脊髄小脳変性症という診断を下れた。不運は重なり、入院・手術を繰り返すうちに認知症も発症してしまった。息子が熱を出したタイミングで母の具合も悪くなった日など、2人の面倒をみるだけで1日が終わってしまう時もあり、なかなか仕事に集中できない時期もあった。
家族でやっている歯科医院は、何かあると仕事に少なからず影響が出てしまう。このままではいけないという思いと、息子もようやく小学校受験を終える時期にあったので、5年前の4月に父から診療所のすべてを引き継ぐことにした。その前から働いていたとはいえ、いざ自分で全部やっていこうとすると、いろいろな課題があった。傾きかげた経営の改善、患者さん、スタッフ、税理士などとの関係など、新規開業とはまた違った種類の問題に直面し、その一つ一つをクリアしていくのに努力した。
さらに、入会してからなかなか参加できなかった歯科医師会にも、なるべく出席するようにした。出産直後は行けなかった勉強会にも積極的に参加し始めた。小学校に入学したからといっても、当然、息子もまだ手がかかる。その点は、主人が優先的に育児を担当してくれているので、とてもありがたいと思っている。
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